Plenus 米食文化研究所

四季のTeishoku

季節ごとの旬を取入れて・・・

南北に長く、周囲を海に囲まれた日本では、春夏秋冬と呼ばれる四季のもとで、野と山と海の幸がもたらす季節の恵みを楽しむ食文化が発展しました。

また日本人は、古来より季節感を大切にしながら生活を育み、暮らしを彩っていくなかで、様々な暦を使ってきました。立春や夏至、秋分など季節の訪れを表現する「二十四節気」やより繊細に季節の移り変わりを表現した暦「七十二候」など、暦は季節を伝えるとともに農作業の目安としても利用され食文化に大きく関わってきました。

「四季のTeishoku」では、四季折々の食材が伝える季節感を楽しむことの魅力を、日本人の日常食である定食(Teishoku)で表現するとともに、現代に受け継がれる暦と食の関わりを紹介いたします。

Season Index

写真:野菜たっぷり鶏南蛮、まむしごはん、落としとろろのお吸い物、かくや

夏 Summer 2017

心地良い風が吹き、太陽光の強さが変わり始める5月。
二十四節気の“立夏”を迎えると、暦の上での夏が始まります。"夏が立つ"という文字から読み取れるように、夏の気配を感じ始めるのがこの季節。春分と夏至の中間に位置する"立夏"は、天文学上「太陽が黄径45度に達した時」と決まっているため、毎年日付が変わり、5月5日前後となっています。

"花冷え"と呼ばれる春の肌寒さを乗り越えて迎えた、新緑が青々と茂るとき。気温の変化に少しずつ体を慣らしていくためにも、旬のものをいただいて、体の内側から体調を整えていきましょう。

夏の定食

今回の主菜は、優しい酸味がアクセントになった鶏南蛮。ご自宅で楽しむことができるよう、わかりやすいレシピつきでご紹介します。

野菜たっぷり鶏南蛮

慣れない暑さでぐったりとしてきたら、食欲増進や消化吸収を助ける酸味が欲しいところ。彩り豊かな夏野菜をたっぷり使った鶏南蛮は、甘味と酸味両方が味わえる南蛮酢と、薄くスライスしたすだちで、からりと揚げた鶏肉をさっぱりいただける一品です。

Recipe

材料

  • 鶏モモ肉1枚
  • 少々
  • 天ぷら粉適量
  • 揚げ油適量
  • 玉ねぎ1/2
  • パプリカ1/6
  • スナップえんどう6

南蛮酢

  • だし1カップ
  • 大さじ4
  • うす口大さじ4
  • みりん大さじ 1
  • 砂糖大さじ4
  • 少々
  • すだちのしぼり汁1個分
  • 赤唐辛子(輪切り)少々

作り方

  1. 鶏モモ肉は縦に2つに切り、肩身各々を一口大にそぎ切りします。
  2. 玉ねぎは半月の薄切りにします。
  3. パプリカは、縦1cm 幅に切り、さっと茹でます。
  4. スナップえんどうは筋をとり、塩茹でして、ななめ半分に切ります。
  5. パットに南蛮酢の材料を合わせ、❷、❸、❹の野菜を浸します。
  6. ❶の鶏モモ肉に軽く塩をふり、天ぷら粉を薄く全体にまぶし、180℃に熱した揚げ油でからりと揚げます。
  7. 揚げたての鶏モモ肉を➎の南蛮酢に入れ、味を含ませます。
  8. 器に鶏モモ肉と野菜を盛り合わせ、スライスしたすだちを添えて出来あがり。

まむしご飯

写真:まむしご飯

7月後半から8月頭にかけての"土用の丑の日"に、 うなぎを食べるという方も多いのではないでしょうか。 今回の『四季の定食』では、関西で“まむし”と呼ばれるうなぎと、 夏の新ごぼうを合わせて、オリジナルまむしご飯に仕立てました。

なぜまむしと呼ぶようになったかは諸説ありますが、ご飯にうなぎを まぶす“まぶしご飯”が訛って、“まむしご飯”になった説が有力。 香りが強く柔らかい新ごぼうとともに、風味豊かにいただきましょう。

写真:かくや

かくや

たくあんや古漬けの塩分で、きゅうりなどの 野菜を漬けたかくやは、食欲のないときに ぴったり。特に冷たいものを摂取することで 弱りがちな腸には、植物性乳酸菌を発酵させた 古漬けがおすすめです。

今回から、和食を楽しむひとつの要素である器に注目。
後藤先生に、料理と器の関係についてお話を聞いてみます。

後藤先生に聞く取り合わせで楽しむ器

食材の味や盛り付けだけでなく、器を"味わう"のも和食を楽しむ秘訣。
和食器には焼き物や塗りなど多くの種類や形があるため、取り合わせの"妙"を楽しめるようになるには、まず基本を学ぶことが大切です。例えば美術館に足を運び、先人たちが作り上げた"本物"を見ることもいいでしょう。基本を学んだ上で、自分が揃えることができる器で実際に盛り付けてみることが、料理を引き立てる器の使い方を知る最善の方法です。

和服や洋服と一緒で、食器もトータルコーディネート。
料理からお皿を考えるだけでなく、使いたいお皿を決めて、
あそれにどんな料理を入れたいのか考えるのもおもしろいですよ。

難しく考えるよりも、使いながら、失敗しながら、学んでいくことでセンスが磨かれていきます。
器に意識を向けることで、いつもの食卓をより豊かなものにしていきたいですね。

おかず ・・・ 八木一夫の中鉢
鶏南蛮を盛り付けた器は、八木一夫氏によるもの。オブジェを作っていた彼が気の向くままに作った食器は、遊び心を感じる自由な造形で、主役にふさわしい存在感を放つ陶器です。
ご 飯 ・・・ 染付ちゃわん
暑い時期には、爽やかな淡いブルーの染付茶碗を合わせてバランス良く。
漬け物 ・・・ 韓国磁器
たくあん(白)ときゅうり(緑)の対比が美しいかくやには、透明感のある白肌を持つ韓国磁器で爽やかに。奥行きを感じさせる白が特徴的な器です。
銘々皿 ・・・ 彫り三島
野菜の鮮やかな色合いと相性が良いのは、一見地味な彫り三島のお皿。優しい色合いと控えめな紋様が、料理を引き立てます。

後藤加寿子

茶道武者小路千家家元の長女として京都に生まれ、同志社大学で美術史を専攻、陶磁器の研究に携わる。茶懐石料理の第一人者だった母に料理を学び懐石料理をベースとしつつ、自らも海外に積極的に出かけ、世界各国の食材や調理法を取り入れるなど、現代家庭でも作りやすくアレンジした数々の料理で“和の食と心”を伝えている。
一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議)顧問。

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