Plenus 米食文化研究所

日本の米づくり

米づくりの1年

日本では水田で稲を育てる水稲栽培が主流です。
山地が多く平野が少ない日本の国土では、山の斜面を切り開いた棚田の小さな水田も活用し、米を育てています。欧州のような種子を土に直播する大規模栽培と異なり、苗を水田に植える栽培方法が中心です。春の田植えから秋の収穫まで、水や肥料、草取りなどの細かな管理の下で、稲は大切に育てられます。

春

春が近づくと、田んぼに、水を入れて代掻きを行い、
田植えの準備をはじめます。
同じ頃、水田に植える苗の栽培が始まります。ビニールハウスで
大切に育てられた苗は、泥の水田に植えられます。

夏

苗は水田で瑞々しい稲に育ちます。一本の苗は根元から分かれ、
株は大きく太く育っていきます。
夏のある日、小さく白い花が
咲きます。花が咲いているのは1時間ほど。
受粉した花が閉じると、40日かけて種子である米ができます。

秋

秋が近づくと、水を抜いた田んぼでは稲穂がゆっくりと種子の
中に栄養を蓄えます。
収穫が近づくと稲穂は籾の重みでずっしり
としてきます。
黄金色に輝く稲穂が秋風にたなびくころ、
一斉に刈り取りが始まります。

冬

収穫が終わった田んぼは、春までの間に麦や野菜の裏作に活用される
こともあります。
雪国では次の春まで田んぼは休みます。
しんしんと降り
積もる雪の中で、次の春を待つのです。

水田の役割

日本の主食を守る

水田は日本の主食、お米を生み出している場所です。日本でお米が作られている水田の面積は244万6,000ha(農林水産省、平成27年度)、ここで作られるお米の生産量は約744万トン(農林水産省、平成27年度)となっています。耕作放棄地の増加や食の多様化により、水田の面積とお米の生産量は年々減少しつつありますが、お米は現在でも自給率100%を維持しています。

日本の景観、文化を守る

日本では遥か昔から、全国各地の水田でお米を作り続けてきました。整然と植えられた瑞々しい稲、秋には黄金色の稲穂がたなびく様は、多くの日本人が懐かしく感じる心の原風景といえるのではないでしょうか。豊かな実りをもたらす水田は、その土地に暮らす人々を結びつけ、実りの喜びをわかちあう場として、様々な文化や伝統、行事を生み出してきました。

生き物を守る

水田は、微生物、タニシやザリガニ、魚、とんぼ、カエルなど豊富な動植物の住処となります。毎年水田に水が入る頃になると、去年そこで育ったカエルがやってきて産卵を待っています。水田に住む生物の糞は肥料となり、稲をすくすくと成長させます。そして稲は空気中の二酸化炭素を消費し、酸素を供給します。水を湛えた水田には、多様な生物が互いに支えあう豊かな生態系があるのです。

水と土と空気を守る

毎年豊かな実りをもたらす水田には、環境を守る働きがあります。水田は大きな溜池として大量に降った雨水を一旦溜め込み、ゆっくりと流す役割をもっています。水田の保水能力は川の流れを安定させ、土の流出を防ぎます。水田は様々な生き物の住処となり、彼らは水をきれいにします。水田で育つたくさんの稲は、二酸化炭素を消費し温暖化を防止します。また水田では水が蒸発するときに大気から熱を奪うため、気温の上昇を防ぎます。

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